ひとりごと 森喜朗氏の辞任によせて
(毎週月曜日に社員向けに社長新聞を発行しています。その末尾の記事、「ひとりごと」を転載します。
世間の出来事をいろいろな側面から見てみようという意図もあるので、かなり偏った表現もありますが、ご容赦ください。 増田昭雄)
森会長の「女性蔑視ともとれる」発言に始まったこの騒動は、森さんの辞任、川淵さんの辞退という思ってもいなかった方向に発展し、なお終息には時間がかかる様相です。森さんの発言はよろしくなかったけれど、ここまで大事(おおごと)にしなくてもよかったのに、というのが私の意見です。
森さんは2015年にガンで余命宣告をされ、その後の治療で快復したものの、人工透析を受けており、テレビで真っ白な顔を見るにつけ、周りから頼まれたこの仕事を命がけでやっているんだと見て取れました。問題発言後も、我が家では家内や娘を含めて「許してやっていいんじゃない」という意見でした。
発言後数日してから、マスコミの世論誘導が始まりました。「発言についてどう思いますか」とマイクやテレビカメラを向けられると、だれでも厳しいことを言わざるをえません。マスコミが安っぽい正義感で世論を決まった方向に導いていくことに私は恐怖を覚えます。
日本経済新聞はここにきて12日朝刊で「特定の業界への利益誘導」をした、と森氏のやり方を批判しています。そう思うなら、このような騒動の前に言うべきことで、立場が弱い者をなじる卑怯なやり方だと感じます。
「老害」という人もいますが何を根拠に言うのかわかりません。老人だという理由で非難するならそれこそ差別発言です。このポストはこれまで日本で開催したオリンピックでは財界の重鎮がやってきたのですが、候補者が断ったから森氏が引き受けた経緯があります。国内ではコロナ禍でスポンサーを説得しなければなりませんし、やる止めるに関わらず当初の予算がまるっきり変わる中、IOCのつわものと費用負担の割合を交渉せねばならない。それだけ顔やすごみがきく人物でないと、この役は修まらず、取りざたされている3名でうまくいくとは思えません。
一度口にしたことは取り消すことはできません。しかし命を賭してがんばっている人を許し励ます寛容さも必要だと考えます。
マスコミが一斉に右だと誘導しようとするとき、本当は何なのか、自分はどう思うのかという視点で物事を考えるようにしましょう。